これからの言語聴覚士②

高齢者を支える

高齢化に伴って高齢者人口が増えるにつれ、失語症や認知症といった症状に悩まされるお年寄りが増えることが予想されます。

特に、2012年時点で全国に462万人いると言われる認知症患者は2025年には700万人に達すると言われており、対策は欠かせません。

また、たとえ重い障害を抱えていなくても、地域で暮らしたいと思う高齢者の方には近辺の住民とコミュニケーションする必要があります。

そのためには言葉は不可欠である以上、やはり言語聴覚士の活躍の場は今後増えてくるでしょう。

高齢者と言語聴覚士のかかわりが深いもう一つの理由として、嚥下や接触に問題のある高齢者が後を絶たないことが挙げられます。

一般に、言語聴覚士は発話や聞き取りなど、もっぱら言語に関わる障害に対応すると思われがちですが、実際には食べ物の飲み込みや摂取など、広く口腔にかかわる活動も専門分野の一つとしています。

ここでは、病院で働く中で高齢者の嚥下・摂食障害と日々向き合い、適切なリハビリ訓練を探す言語聴覚士、Nさんの活動を追うことで、超高齢社会日本で、言語聴覚士は何ができるかを考えてみましょう。

適切なリハビリ訓練を探す言語聴覚士、Nさんの活動

「Gさんの好きな食べ物は七味唐辛子をてんこ盛りにしたそばでしたよね。以前横浜市内にあるベンチャー企業の社長さんと、たまプラーザ駅裏側にあるK寿司に食べに行ったときかけそば一杯だけ食べて、しかも七味を一瓶開けたっていう話を聞きましたよ。でも、今日は無理をせず、麺を短く切って食べやすくしてから食べましょうね」

お昼時の病室に、Nさんの明るい声が響く。

患者のGさんは数年前にがんの摘出手術を受けて以来体力が低下し、筋肉が衰えてしまった。

結果かむ力や飲み込む力なども同時に低下してしまい、食事の時に困難を覚えるようになった。そこで、摂食指導を受けるとともに食事の際の注意点や問題なく食事をするためのアドヴァイスをもらっているのだ。

コシのある麺を、字句通りかみしめるようにしてゆっくりと味わうのが楽しみだったGさんにとって、そば屋で出されるような仕方でそばを食べられなくなったのは大きな衝撃だった。

「もうそばが食べられないのか……」

と落胆していたところに、Nさんから希望をもらった。

調理にも関心のあるNさんは、失意のふちにある患者を見かねて何か出来ないかと工夫を凝らし、考え付いたのが、そばを短くし、さらにゼリー状にして食べやすくすることだ。

おかげでコシは落ちたとはいえ好物が再び食べられるようになり、Gさんは元気を取り戻した。

「特に高齢者の場合、術後は咀嚼や飲み下しが満足にできない方が多く、以前と同じように好きな種ものが食べられなくなったり、流動食しか摂取できなくなる方もいます。そうしたとき、落ち込んでしまう患者さんは大勢います。しかし、能力が回復するに従って食べられるものは増えてきますし、調理に工夫すれば一層食事の幅が広がります。栄養士の方とも相談しながら、そういう工夫をすることで患者さんに喜んでもらえるのがうれしいですね」

と、Nさんは話す。

以上みてきたように、若年層にはあまり見られない問題や、高齢者特有の問題に悩むお年寄りは少なくありません。

そのような中、言語聴覚士はどのように活躍できるのでしょうか。

第一に、患者の要求や希望を察し、必要な対策をすることです。

たとえば、嚥下障害のある患者は通常プリンやゼリーで摂食の訓練を行いますが、中にはそうした食べ物を好まない方もいます。

しかし、それを言明することを遠慮して、不満を抱えてしまうケースも見られます。

その不満を察知して、ご家族の方や患者の友人などから話をうかがって彼(女)の好みを知り、それに合わせるようなメニューで訓練すれば、その気遣いは本人にも伝わり、何より好物で訓練した方が、食べたいと思う気持ちの後押しがあるため効率も上がるはずです。

次に、他の専門家との連携をとること。

言語聴覚士はあくまで言語や摂食の専門家であって、料理のエキスパートではありません。

中には調理に関心の深い方もいるでしょうが、それでも取り入れることのできる知識には限りがありますし、視点も限られてしまいます。

そこで、栄養士や看護師などに相談し、アドヴァイスをもらいつつ工夫を重ねることが必要になってきます。

このように、高齢者からの、いわば潜在的なニーズを読み取り、それを他分野の専門家と協力しつつ解決に導く努力が、高齢社会を生きるお年寄りを支えるうえで、言語聴覚士の重要な資質となってくるでしょう。

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